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Employee Discussion

伝統の継承と新たな魅力を
創出する「界 加賀」

株式会社星野リゾート 界 加賀 総支配人

森下 亜椰(左)

株式会社星野リゾート・アセットマネジメント
投資運用本部 アセットマネジメント1部

竹村 映美(中央)

株式会社星野リゾート
国内企画開発 ファシリティマネジメント

石崎 将貴(右)

「べんがらラウンジ」誕生の背景

森下:「界 加賀」は伝統建築物を改修した伝統建築棟(旧館)と、新築の客室棟(新館)の2棟構成で2015年12月より運営を開始しています。今回は伝統建築棟の2階に2024年3月にオープンした「べんがらラウンジ」について、お2人とお話ししたいと思います。

竹村:金沢~敦賀間の北陸新幹線の延伸が決定し、新幹線の開業を見据え、新たな打ち手として、伝統建築棟の開業より未着手の部分を改修することを軸に検討を進めていましたね。

森下:そうなんです。伝統建築棟改装は、「界 加賀」の物件自体の価値最大化を図るべく、第一弾で2023年4月に1階母屋に「金継ぎ工房」が誕生しています。そして今回、第二弾として、「べんがらラウンジ」がオープンしました。伝統建築である紅殻色の空間で、4組限定の席からは開湯1,300年の歴史を持つ山代温泉の「湯の曲輪(ゆのがわ)」の街並みを紅殻格子越しに眺め、美しい器や美味しい地酒を楽しみ、夕食後の静かなひと時を過ごすことができます。

石崎:山代温泉エリアのランドマークといえる古総湯が目の前にある一等地に面する伝統建築棟を、どのように活かしていくのかは歴代の検討事項でした。特に今回は、設計の段階からキラーフォトを意識し、外の風景も中の建築美も、ビジュアルとして互いを引き立てあえるデザインを目指していました。お客様が古総湯の眺めを堪能することができるように、ソファーに座った時、視座と窓の高さが合うようにしたり、ソファーの向きや配置も多くのパターンで検討しました。また、フィックスガラスにすることで窓の開口部が大きくなり、撮影時の映り込み箇所も少なくすることができました。

竹村:九谷焼や加賀友禅に基調されている“五彩”を壁や家具に配し、空間全体で「加賀ならではの色彩の世界」を体感できます。また、隣席とのさりげないプライベート感を演出するのに、同じく工芸品である水引も一役買っています。加賀の美しい工芸品を多く堪能できる空間となりました。

石崎:また、ラウンジ自体が暗い造りとなっているので、景色を楽しみながら、キラーフォトも撮れるように照明も工夫しました。そして何よりのこだわりは、壁を取り払い「梁」を見せたこと。吹き抜け空間に組み上げられた加賀の伝統建築の力強さと開放感を味わってもらえるような空間になっています。

森下:ラウンジの入口では、スタッフが地域の作家さんに直接連絡を取り、選りすぐりの九谷焼や山中塗など約100種類の酒器や食器が出迎えます。手作りの持つ温かみや作家さんの思いを感じながら自分だけの宝物を見つけるように器を選び、北陸のお酒とおつまみを楽しむことができるんです。ラウンジで使用する器は、すべてスタッフが集めてくることで、実際にお客様が使用する際に「どんな想いが込められて造られたのか」「どのようなこだわりがあるのか」をきちんとお伝えすることができます。こだわるあまりに、器の選定にはだいぶ時間がかかりました。

竹村:素敵な器がたくさんあって、ついつい目移りしてしまいますね。お客様自身が好きな器を選べるというのは新しい体験ですし、ワクワクしますね。

森下:実際に使用した器に興味をもって、翌日窯元を訪れるお客様もいらっしゃいます。「べんがらラウンジ」での体験を通して、地域とお客様が結びつくことにもつながっているんです。

伝統建築棟の改装工事での連携について

竹村:石崎さんとは、ほとんど毎日連絡を取り合っていますよね。特に今回の伝統建築棟の改装工事は、施設を営業しながらの工事だったので、石崎さんだけではなく、森下さんも含めて工程表の共有など密に連携を取りながら進めていきました。

石崎:お客様がいる中での工事だったので、チェックイン・アウト時のご案内や、オペレーションにお客様がネガティブな反応にならないように、施工会社と念入りに調整を行いました。例えば、壁抜き工事を行う際に、フロントがある場所に足場を作成しないといけなかったので、フロント機能を一時的に別の場所に移すなど工夫したり、森下さんを中心にスタッフと運営方法を適宜相談しながら進めましたね。

森下:こうして石崎さん、竹村さんと密に連携したことで、幸いにもお客様から大きなクレームなどをいただくことなく無事に工事を終えることができました。

竹村:本来このような大規模な改修工事は、施設の休館期間中に行うことが多いので、営業しながらの工事対応は本当に難しかったと思います。

森下:現場スタッフ一人一人のお客様への声掛けや配慮、対応力に救われました。何より、現場で何か問題が起こったらすぐに石崎さん、竹村さんに報告・相談ができる関係性が築けていたことも大きかったです。

石崎:一丸となって取組みましたね。施工業者は工事を確実に遂行することで手いっぱいで、施設の運営側まで気に掛けることは難しいので、我々FM(ファシリティマネジメント)が運営についてスタッフと調整しながら進めていくことができたことは、とても良かったと思います。

運営開始10年目を迎える
「界 加賀」のこれからについて

森下:「界 加賀」の前身である白銀屋(しろがねや)に逗留したこともある北大路魯山人は、かつて「器は料理の着物」と表現しました。「界 加賀」では今でもその言葉を大切にしており、器と料理のマリアージュをテーマに、器を宝物として大切に扱っています。滞在の始めに、「金継ぎ工房」で器の大切さを学び、夕食では実際に器と料理を楽しみ、夜には「べんがらラウンジ」で自分の感性に合った器を選んで楽しむ。ゆくゆくは売店で器を購入し、自宅でも楽しんでいただける、そんな滞在を提案していきたいと思っています。また、これまではメディアの方からの取材依頼はカニのシーズンがほとんどでしたが、4月、5月にも複数のメディアに取り上げていただいたのは運営開始後初。改装工事の効果を実感しています。

竹村:施設が開業するタイミングがメディア露出のピークといわれていますが、今回のように改装でこれだけの露出効果が出ているのは界ブランドでもなかなかないと聞きました。能登半島地震発生直後は宿泊需要が落ち込みましたが、2月中旬からは盛り返し、北陸応援割の後押しもあって大分回復してきましたよね。

森下:今は北陸エリア全体が盛り上がってきていますが、この盛り上がりを一時的なもので終わらせず、今後も継続していけるような取組みを行いたいと思っています。今回の伝統建築棟改装による「べんがらラウンジ」と「金継ぎ工房」の誕生は、年間稼働率の平準化・連泊滞在の推進が目的でした。今後は、滞在を楽しんでいただくために、魅力ある連泊滞在プランを押し出していきたいです。

石崎:もともと使用していなかった伝統建築棟を、魅力あるコンテンツ・体験ができる場所として設計することができたことは、FMとしてとてもやりがいを感じることができました。一方で、建物自体が古く、設備的にも老朽化しているので現行のスタッフのオペレーションに対応できていないハード面が課題に感じています。FMとして、スタッフにヒアリングをしながら働きやすい職場設計にしていきたいです。

竹村:今回の改装工事により、さらに魅力ある施設となった「界 加賀」をどう活かしていくのかが大切だと思っています。2024年は、「界 加賀」が運営を開始して10年目を迎える節目年でもあるので、運営側と協力しながらHRAMのノウハウを最大限に活かし、施設の利益最大化につなげていきたいです。

3人の思う「界 加賀」の魅力

森下:白銀屋から続いてきた400年の歴史、伝統という王道の要素と、「べんがらラウンジ」や「金継ぎ工房」などの新しい部分が融合しているところが魅力です。古き良きを残しながら、新しい価値を作り出しているのは「界 加賀」の最大の魅力だと思います。

石崎:宿泊されるお客様に伝統建築棟の魅力を最大限に感じてもらえるところだと思います。宿泊した後、「界 加賀」の歴史を感じたり、また行きたいと思ってもらえるような空間づくりにこだわっているので、ぜひ体験してほしいです。

竹村:水引、器などの地域特有のものが施設の随所にちりばめられているところが魅力だと感じています。宿泊されるお客様に細部まで金沢・加賀の魅力を味わってもらいたいというおもてなしの心が体現されている、そんな施設だと思います。

Profile

  • 株式会社星野リゾート 界 加賀 総支配人

    森下 亜椰(もりした あや)

    2020年入社。初期配属の界 鬼怒川での経験を経たのち、界 ポロトの開業サポートに携わる。界 霧島へ異動後、2022年の立候補プレゼン大会に参加し、界 阿蘇で初めて総支配人を務める。2023年12月より界 加賀の総支配人に着任。

  • 株式会社星野リゾート・アセットマネジメント
    投資運用本部 アセットマネジメント1部

    竹村 映美(たけむら えみ)

    2023年中途入社。アセットマネジメント1部に所属。界 加賀の他、主に星野リゾート運営物件の期中管理を担う。

  • 株式会社星野リゾート
    国内企画開発 ファシリティマネジメント

    石崎 将貴(いしざき まさたか)

    2020年中途入社。青森事業所に初期配属。奥入瀬渓流ホテルにて、FM(ファシリティマネジメント)、サービス業務を経験。OMO7大阪で開業から約3年間FM業務に従事した後、2023年10月から北陸エリアを担当。