Employee Interview
持続可能な観光が、
長期的な価値を生む


インタビュー
菊池 昌枝
(サステナビリティ推進室)
インタビュアー
唐澤 美怜
(企画管理部)
資産運用会社である私たちは、サステナビリティを本投資法人の長期的な価値創造と切り離せないものと考えています。その考え方をより分かりやすくお伝えするための手段の一つとして、本投資法人ウェブサイトのサステナビリティページをリニューアルしました。本ページでは、同ページのリニューアルを担当した企画管理部の唐澤が、サステナビリティ推進室の菊池に話を聞きました。星野リゾート・アセットマネジメントの社員が描く持続的な成長への考え方をお伝えします。
社会・環境課題を、
運用上の重要課題として捉える
唐澤:最初に私たちの結論からお伝えすると、サステナビリティは「守りのコスト」ではなく、本投資法人が選ばれ続け、長期的な価値を生み続けるための「投資」だと考えています。今日は、なぜそう考えるのかを伺います。
まず、昨今の世界情勢はきわめて不透明で、原油価格の高騰、食料不安、各地で続く紛争、大規模な山林火災といった自然災害——。こうした社会課題や気候変動は、もう遠い未来の話ではなく、私たちの暮らしや企業活動、そして私たちが運用する資産にも直接影響を与える段階に入っていると感じます。
菊池:そうですね。かつてサステナビリティに関する開示は、主に機関投資家に向けたもので、「直接利益を生むわけではない」という見方もありました。でもいまは「利益に直結しないから」と目を逸らせる状況ではありません。環境や社会の問題は、かつては事業の「外」にあると考えられていましたが、いまは事業を続けるうえで無視できない前提条件になっています。
唐澤:なるほど。だからこそ私たちは、サステナビリティを社会貢献の一環としてではなく、「運用上の重要課題」として捉えており、保有する物件の価値を将来にわたって守り、高めていくための前提だと考えているのですね。今回のサステナビリティページのリニューアルも、その考え方を投資家のみなさまにより分かりやすくお伝えするための手段ということですね。
観光産業の前提条件が、
変わり始めている
唐澤:観光産業も、この変化と無関係ではいられませんね。私たちが運用するのは、まさにその観光産業の資産であるホテル・旅館だからです。観光産業にとって、こうした社会・環境の変化はどんな意味を持つのでしょうか。
菊池:旅とは、その土地の自然や文化、人々の営みに触れる体験そのものです。つまり、地域社会や環境が続いていくことの上に成り立つ産業なのですよね。だから、人口減少や高齢化による地域コミュニティの衰退、伝統文化の継承危機、エネルギー価格の上昇、気候変動による自然環境への影響は、単なる社会課題ではなく、観光需要や地域の魅力、そして保有物件の事業基盤そのものに直結します。私たちにとって、地域や環境の持続性は、将来にわたって物件の魅力と収益力を保てるかどうか——つまり運用の根幹に関わるテーマだと考えています。
唐澤:観光事業には、二つの視点があると思っています。一つは中長期的な価値創造を期待する投資家の視点、もう一つはその土地ならではの体験を求める宿泊者の視点です。私たち運用会社は投資家の側に立ちながら、同時に「宿泊者から選ばれ続ける施設か」という目で物件を見ています。地域や自然と共生しながら長期的に選ばれ続けること——それが、これからの観光資産の競争力であり、私たちが本投資法人の運用で重視していきたい点ですよね。
菊池:そして、その競争力を支える仕組みそのものも、いま変わり始めていますね。
環境対応を、「コスト」から「投資」へ
菊池:これからは、従来型の「コスト削減」だけでは、持続的な成長を実現しにくい時代です。本投資法人が保有する物件には温泉やプールを備える施設も多く、一見するとサステナビリティの流れに逆行して見えるかもしれません。実際、重油からの脱却は短期的にはコスト負担を伴いますが、長期的にはとても重要な経営課題です。
唐澤:そこで運用会社として、本投資法人の運用にICP(内部炭素価格)の考え方を取り入れることを検討されていますね。ICPとは、二酸化炭素の排出量に対して社内で独自の価格を設定し、環境対応を単なる負担ではなく、将来のリスクを減らし競争力を高める「投資」として評価する仕組みですが、これを使うと、何が変わるのでしょうか。
菊池:この考え方を使うと、これまで「割高」に見えていた環境配慮型の設備も、見え方が変わります。将来のコスト上昇や規制強化に備える「合理的な投資」として位置づけられるからです。
唐澤:あわせて、星野リゾートが創業以来取り組んできた水力発電所の設置や地中熱の利用、省エネ建築、バイオマスのリサイクルによるエネルギーの自給自足といった工夫が、温室効果ガス(GHG)をどれだけ抑え、将来の価値を守っているのか。ICPの考え方は、その成果を定量的に示す手がかりにもなるのではないでしょうか。
菊池:ただ、ICPのような新しい仕組みも、外部の流れにただ追随するだけでは意味がありません。大切なのは、将来のシナリオを冷静に想定し、運用会社のなかで徹底的に議論を重ねることです。そうしてはじめて、環境対応は「借り物」の基準ではなく、私たちが自ら共有し推進していく運用の方針として根づきます。
唐澤:つまりサステナビリティへの取組みは、「やらなければならないこと」ではなく、環境・社会課題への対応を事業の成長につなげ、投資家・宿泊者・地域といったステークホルダーから「選ばれ続ける」ための、運用の戦略ということですね。
地域との共生が、
選ばれ続ける施設をつくる
菊池:環境対応と同じように、地域社会との共生も、施設が長期的に選ばれ続けるための大切な条件です。その分かりやすい例が、「OMO7高知」です。
唐澤:OMO7高知は、リブランドで生まれ変わった施設ですね。
菊池:そうです。同施設では、スタッフの約50%を、運営開始前から高知県に暮らしてきた方々(移り住んだ方を含む)が占めています。地域の言葉や文化を肌で知る人材が、日々の接客や体験づくりを担っているのです。さらに、高知を代表する文化である「よさこい」を毎日宿泊体験のなかに取り入れ、宿泊者と地域の方々が日常的に出会う場を生み出しています。
唐澤:こうした、その土地ならではの魅力を宿泊体験の価値に変えていく取組みが、ほかの地域では代えのきかない競争力になり、結果として「選ばれ続ける施設」につながっていくということですね。
菊池:現場でそうした価値を生み出すのは、運営を担う星野リゾートです。そして、それを長期にわたって支える資産の保有・運用を担うのが本投資法人、という関係ですね。
唐澤:そうです。本投資法人と星野リゾートは、「所有」と「運営」に役割を分けながら、どちらか一方ではなく双方がともに成長していく“ 共存共栄” の関係にあります。だからこそ私たち運用会社は、こうして価値を生み出す資産に投資し、ホテル運営における星野リゾートの強みと、不動産運用における私たちの知見を持ち寄って、本投資法人の競争力を長期で高めていきたいと考えています。
社会への貢献と、収益の両立を目指して
唐澤:社会への貢献と経済的な価値(収益)を、どちらかを犠牲にするのではなく両立させながら、長期的な価値を生み出していく。これは単なる理念ではなく、地域の魅力を維持・向上させ、宿泊者から選ばれ続けることで、施設の競争力や資産価値の向上につなげていく、運用の戦略でもあります。
菊池:施設が選ばれ続けることは、最終的に本投資法人の収益基盤の強さにつながります。サステナビリティは、投資家のみなさまのリターンとも地続きのテーマなのですよね。
唐澤:財務の面でも、同じことが言えそうですね。
菊池:はい。例えば、本投資法人では、環境性能が一定の基準を満たすと認められた資産(環境認証を取得した資産)を対象に、資金の使い道を環境分野に限定した借入れである「グリーンローン」を活用しています。これにより、資金調達の手段を多様化し、財務基盤の強化にもつなげています。
唐澤:環境・社会課題への対応は、もはやコストではなく、将来の競争力と資産価値を維持・向上させるための投資である——最後に、その考えを改めて聞かせてください。
菊池:サステナビリティへの取組みこそが、本投資法人への投資を長期にわたって継続していただく価値の源泉になると考えています。持続可能な観光を通じて、中長期的な価値創造に努めていきたいと思います。
