English Search

5. ベストプラクティス

ベストプラクティス

本投資法人では、環境および地域との関係性に関する取組みを、一律の施策としてではなく、各物件の特性や地域性に応じた実践の積み重ねとして捉えています。
本章では、こうした現場から生まれた取組みの中から、代表的な事例をご紹介します。これらの事例は個別の実践であると同時に、各物件の運営に関わる多様な主体の創意工夫によって、本投資法人のサステナビリティが支えられていることを示しています。

事例1:界 遠州 / 茶畑再生により形成された景観資産と体験価値「つむぎ茶畑」

2018年に着工し、2019年に完成した本茶畑は、当初、茶樹の生育不良という課題に直面しました。これを受け、2021年に
土壌調査を実施し、2022年には排水性改善工事を行うとともに、全ての茶樹を一度抜き取り、土壌環境の再構築を行いまし
た。同年に再整備した茶畑では、宿泊者参加型の植樹も実施し、再生プロセスを体験価値として組み込んでいます。
その後も約4年間にわたり、地元茶農家からの技術習得や排水改修、冬季の保温対策など、運営と環境改善を一体で進めてき
ました。これらの継続的な改善の結果、茶葉の収穫が可能な水準に到達し、宿泊者向けプログラムの実施に至っています。
本取組みは、自然環境の不確実性に対して観察・検証・改善を繰り返す運営モデルの一例であり、長期的な資産価値と体験
価値の向上に資する取組みです。

浜名湖を臨む「つむぎ茶畑」
2021年 土壌調査で穴を掘る様子
五感で愉しむお茶作り体験

事例2:星のや竹富島 / 島テロワールによる体験価値創出モデル

本施設では、「島テロワール」をコンセプトに、竹富島の自然環境や文化、人々の営みから生まれる固有の価値を、ガストロ
ノミーとして表現しています。単なる食事提供ではなく、島の気候・風土・食材・調理技法を統合し、滞在体験と一体化させ
ることで、体験価値の向上を図っています。
2026年春のコースでは、沖縄で「うりずん」と呼ばれる季節をテーマに、旬の食材を用いた料理を提供しています。鰹、熟
成肉や野菜など、海と里の恵みを活かしつつ、フレンチをはじめとする技法で昇華することで、地域性と付加価値の両立を
実現しています。また、島独自の調味料やハーブを取入れることで、地域文化の継承と差別化を図っています。
さらに本取組みは、料理単体ではなく、景観や時間の流れ、星空といった自然環境と連動することで、滞在全体を通じた体
験価値として設計されています。これにより、短期的な消費にとどまらない、記憶に残る体験を創出しています。
本モデルは、地域固有の資源を活用しながら、体験価値の高度化を通じて顧客満足度の向上と収益性の強化を図るものであ
り、観光資産の価値最大化および長期的なブランド構築に資する取組みです。

見晴台から望む集落景観
島の春を表現した「鰹と牛肉のミキュイ 焼きトマトソース」 
「ボキューズ・ドール」国際料理コンクールに日本代表・アジア代表として出場した経験もある総料理長

事例3:星のや軽井沢 / 野生動物との共存を軸とした自然資本マネジメント

軽井沢における宿泊・観光事業は、森林生態系の健全性および野生動物との共存に強く依拠しており、自然環境は事業基盤
そのものと位置づけられます。
本投資法人が施設を保有する軽井沢では、野生動植物の専門家であるNPO法人ピッキオが、2000年代初頭より軽井沢町の委
託を受け、ツキノワグマの生態調査および共存対策を継続的に実施しています。
具体的には、生息域や行動圏の把握、誘因源(廃棄物・餌付け)の管理、安全な人間活動の環境の整備などを通じて、自然
資本および生態系の維持管理を行っています。
また、個体識別に基づく行動管理(発信機装着、行動追跡、学習放獣、ベアドッグによる追い払い)と、ゴミ管理や電気
柵、情報提供といった環境整備を組み合わせることで、人身事故や被害リスクの低減を図っています。
これらの取組みは、駆除に依存しない形で人と野生動物の共存を実現し、観光資産の保全および事業リスクの低減に資する
取組みです。

ベアドッグ
発信器をクマに装着する活動
クマが開けられない構造のゴミ箱を設置

事例4:ANAクラウンプラザホテル金沢/サーキュラーエコノミーで地域経済に貢献を目指す

「令和6年能登半島地震及び豪雨」により甚大な被害を受けた地域への支援の一環として、地域資源と連携した継続的なコラ
ボレーション企画を実施しています。
県内唯一の水族館である「のとじま水族館」との取組みでは、対象商品の売上の一部を生き物の飼育支援に充てる仕組みを
導入し、支援と事業活動を連動させています。また、能登塩など地元食材を活用した特製スイーツを開発・販売し、地域の
魅力発信と商品価値の向上を図っています。
季節ごとにテーマを変える継続企画とすることで、来訪者との関係性を維持・強化しています。
本取組みは、復興支援にとどまらず、地域との持続的な関係構築とブランド価値の向上に資する取組みです。

水族館の人気者をデザインした季節のスイーツ
「のとじま水族館」は、能登半島近海に生息・ 回遊してくる魚を中心に飼育・展示しています。「令和6年能登半島地震及び豪雨」により休館していましたが、2025年3月には 全展示を再開しました。

事例5:横展開を進める観光バリューチェーンの脱炭素モデル(SAF活用)※

観光におけるCO₂排出の多くが旅行者の移動に由来することを踏まえ、本投資法人では、宿泊にとどまらず、移動を含む観
光バリューチェーン全体での排出削減の横展開をサポートしています。具体的には、廃食用油を活用したSAF(持続可能な航
空燃料)の活用を通じて、航空分野における脱炭素と資源循環の両立を推進しています。
本取組みは当初1施設から開始しましたが、その意義や実装可能性への理解が広がり、現在は複数施設へと展開しています。
こうした横展開は、個別施設の環境対応にとどまらず、グループ内で実践知を共有しながら、観光業全体の脱炭素エコシステ
ム形成につながる取組みです。

現時点での取組み対象施設:10施設(2025年10月31日現在)

星のや富士・界 箱根・界 遠州・ANAクラウンプラザホテル広島・ANAクラウンプラザホテル金沢・ ANAクラウンプラザホ
テル富山・リゾナーレ熱海・界 伊東・界 長門・OMO7大阪

  • ※SAF(Sustainable Aviation Fuel)とは廃食用油や植物・動物油脂、木質バイオマスなど、化石燃料以外を原料とする「持続可能な航空燃料」のことを指し、従来の原油からつくる燃料と比べてCO₂の排出量を大幅に削減することができるとされています。